デジカメで人物を撮るなら85mmの単焦点レンズ

単焦点レンズで人物を撮る場合、背景の大自然を丸ごと撮るなら広角レンズ、グラウンドの選手ならば望遠レンズですが、近くの人物を表情や雰囲気を含めて魅力的に撮るならば中望遠レンズが最適です。

人物を最も美しく撮影できるレンズ

焦点距離が85mmの単焦点中望遠レンズはポートレート(人物撮影)に目的を絞ったレンズと言えます。ボケの美しさはフルサイズのデジタル一眼では勿論、APSCサイズのデジタル一眼でも背景を美しくボカした撮影が楽しめます。
特にF値が1.4や1.8の明るい85mmの単焦点レンズは人物をきれいに撮れるレンズです。
ズームレンズとは比べものにならない明るいＦ値は、背景をボカすのは勿論、表情の些細な変化も逃さず捕らえることができます。
しかし、明るいがゆえに被写界深度も浅く、開放でピントが合う範囲は数ミリです。

例えば、少し横を向いたモデルの左の瞳にピントを合わせて絞りを解放で撮影すると、右の目はピントがはずれてしまうこともあり、撮影テクニックも要求されます。
しかし、通常は2段くらい絞り込んで使うことで誰でも美しいポートレートを撮ることができます。

プロが人物撮影に85mmレンズを使うもう一つの理由

85mm単焦点レンズの本当の魅力は「レンズの明るさ」と「背景のボケ」だけではありません。
それは人物撮影に適した「被写体との距離」です。
28mmレンズを使って50cmの距離から「こっち向いて」と言われても戸惑うでしょうし、200mmレンズで10m先から「もう少し右～！！」と叫ばれても周りが驚くだけです。
85mmレンズはカメラマンとモデルの距離が近すぎず遠すぎない「丁度良いレンズ」なのです。
カメラマンとモデルの距離が適当なことが85mm単焦点レンズを「人物撮影で使いやすいレンズ」にしている理由であり、カメラマンが人物撮影に85mm単焦点レンズを選ぶ理由でもあります。

85mmレンズで写る範囲と被写体との距離
(フルサイズ撮像素子搭載デジカメに付けた場合)

家庭の室内では焦点距離85mmのレンズは大人の被写体が画面に入りきらないことがありますが、赤ちゃんなどを少し離れて撮るには打ってつけの焦点距離となります。
(水平画角は長辺23.9度×短辺16.1度)

※距離はデジカメ内部の撮像素子の位置からです。レンズ先端からではありません。

被写体との距離（ｍ）	85mmレンズで写せる範囲の目安
1m	幅:0.28m×高:0.42m	幅:0.42m×高:0.28m
2m	幅:0.56m×高:0.85m	幅:0.85m×高:0.56m
3m	幅:0.85m×高:1.27m	幅:1.27m×高:0.85m
5m	幅:1.41m×高:2.12m	幅:2.12m×高:1.41m
7m	幅:1.98m×高:2.96m	幅:2.96m×高:1.98m

85mm単焦点レンズのメリットと選び方

1.カメラマンが動くことで被写体様々な表情を引き出せる

2.人物撮影に最適な撮影距離

3.背景や周りをボカして人物を引き立たせて写せる

4.レンズが明るいので室内でもストロボを使わずに自然な撮影が出来る

以下は2015年3月のニコンとキヤノンの85mm単焦点の一番明るいレンズです。
価格による主な違いは「明るさ」と「重さ」です。
予算だけでなく、重さやフードを含めた大きさも旅行では選択の基準になります。
また、f1.8レンズと上のクラスの差額はAPS-Cサイズデジタル一眼とフルサイズデジタル一眼の価格差に匹敵するので、f1.8レンズを選んで本体をフルサイズデジタル一眼レフカメラに買換える選択肢もあります。
なお、レンズの絞り羽根は奇数のものと偶数枚のものがあり、キヤノンの85mmは8枚で、ニコンは絞り羽根が7枚のものと9枚羽根円形絞りのものがあります。
通常の撮影ではあまり差が出ないのですが、絞り羽根7枚のレンズと較べて9枚羽根の円形絞りのレンズはより美しい丸ボケを作り出します。

リーズナブルだが高額ズームより格段に素晴らしい 85mmF1.8

人物撮影のプロ達が常用する 85mmF1.4

開放で使いこなすには知識と感性が必要になる 85mmF1.2